中国からの訪日客が日本の小売店で大量の買い物をする現象、俗に言う「爆買い」が起きたことは、日本の経済に大きなインパクトを与えました。
2015年ごろに「爆買いブーム」はピークを迎えて、以降現在に至るまでの3~4年間は、多少落ち着きを見せているものの、依然として中国人観光客の購買力は高いです。
一連の消費活動のことは、「インバウンド消費(インバウンド需要)」などと称され、これまで数多くの日本企業が、これらを踏まえたマーケティングを行いました。
中国のインバウンド消費を見越したマーケティング戦略は、まだしばらくは続ける必要がありそうですが、「そろそろ国内でできることは頭打ちでは?」「新しいことをやらないとダメなのかも……」といった、不安や疑問を抱えている日本企業が少なくありません。
そこで今回は、中国のインバウンド消費の根幹に迫りつつ、これからのインバウンド需要に対して日本の企業が行うべきことはどんなことなのか、まとめていきたいと思います。
中国での買い物はスムーズ!なのにわざわざ日本で大量の買い物をすることは変?
中国は、日本よりもずっとキャッシュレス化(現金を持たない)が進んでいます。
外で買い物をする時や、何らかのサービスを利用する時はスマホ決済が当たり前で、ネット通販も電子マネー利用を前提にサイト構築がされている結果、支払い完了までの流れが簡略化されています。
要するに、中国で買い物をすることは、非常に楽なのです。
特に物が安いという訳ではなく、電子マネー決済ができない小売店もまだ多い日本で買い物をすることは、自国でのスマートな買い物に慣れた中国人にとって、わずらわしいはず。
では何故、あえて日本にやってきて、(おそらく中国人にとっては不便な)日本の小売店で、大量に買い物をするムーヴメントが起きたのでしょうか?
そこには、中国で流通する日本製“とうたっている”製品に対する、中国人の鋭い視点が深く関係しています。
以降、項を改めて説明していきましょう。
中国のインバウンド消費は「ホンモノを購入したい」という気持ちから生まれた
中国でも、日本製の商品が売っていないわけではありません。
ただし、実店舗・ネット店舗問わず正規店以外では、贋作(がんさく)、すなわちニセモノが売られていることが多いのです。
これは何も日本製品に限ったことではなく、ネームバリューのある海外製品の贋作が数多く、中国国内で「正規品」として販売されています。
正規品に見えるように作られた贋作は、見た目を模倣するクオリティがかなり高いため、鑑定の知識がない一般消費者では、「これは贋作だ」と区別できないことが増えてきました。
ブランドバッグならまだしも、電化製品など“日常生活に密接”していて、本来はメーカーによって品質・安全性が保証されているべき物が、「実は贋作で、粗悪品だった……」となると、非常に困ります。
「中国の店では日本の正規品が正規品でない可能性がある」、だったら「日本の店へ直接行って、確実に正規品を買ってこよう」と考える人々が大勢いた結果、例の爆買いブームが起こったことは、意外と知られていません。
頻繁に日本と中国を往復することは金銭的に難しいため、「団体」で「まとめ買い」をするようになった
「ちゃんとした正規品が欲しい」という中国人の気持ちが、日本で起きた爆買いブームの一因であることは、先ほどの項目で説明しました。
これについて、今もう少し情報を付け加えておきましょう。
正規品が欲しいユーザーの全てが、頻繁に中国と日本を行き来できるような財力を持っている訳でありません。
そのため、1度の渡航で欲しい物をできるだけたくさん買う傾向が、多く見られました。
また、日本で買い物をするための旅行は、家族や友人と予定を合わせて、団体で行くケースも多かったようです。
これには、団体での申し込みのほうが安くなる航空券・旅行券があることや、荷物を持てる人が多いほうがいいことが、関係あるとされています。
日本で暮らす人々にインパクトを与えた「爆買い」というシステムは、実に様々な要素が絡んで生まれたわけですね。
これからの「中国インバウンド需要」を考える
「中国人観光客はずっと、たくさんの商品を買ってくれる」と楽観視している日本企業は、さすがに少ないようです。
むしろ、「爆買い」が一種のムーヴメント的な消費の動きである以上、いつかすっかり収束してしまうことを心配する声が多く挙がっています。
実際に、2019年1月に施行された「中国電商法」によって、代理購入業者が厳しく規制されることとなり、日本でしか買えない服飾品・化粧品・腕時計などの売上に影響を及ぼしました。
この中国電商法のような「正しい動き」によって、インバウンド需要・インバウンド消費にブレーキがかかることを、いつでも想定しておかなくてはいけません。
日本にやってくる中国の人々から、「日本で買い物をしたい」と長く思ってもらうため、現状の売上に甘えない戦略を立てることが必要でしょう。
「日本でしか買えない商品」を常に新しく用意する
シンプルですが、日本でしか買えない「限定商品」を常に用意することは、インバウンド消費を減らさないために効果的。
ブランドとしてのネームバリューが上がった結果、既存の商品の強さに依存してしまうケースが稀に見られますが、それではいつか売上が“頭打ち”になる可能性が高いのです。
私たちが海外へ旅行に行く時、その国でしか得られない体験や出会い、料理や名産品を求めていますよね?
日本企業がインバウンド需要に応え続けるために、上記のような「ここ(日本)でしか得られないプレミアムな価値」を枯渇させないことは必須でしょう。
「日本に来て買ってもらう前提」から脱却してもいい
そもそも、訪日観光客の購買力に100%依存しないこと、すなわち「日本に来て買ってもらう前提」から、思い切って抜け出す考え方もありでしょう。
確かに中国人観光客は、日本に旅行へ来てたくさん物を買ってくれるかもしれませんが、“日常の消費”はやはり中国にあるわけです。
“中国で暮らす人が、中国で日本製の商品を買える”ように、中国向けWEBサイトの開設を始めとした中国WEBマーケティングを行い、本格的に中国進出に乗り出す日本企業がじわじわと増えています。
まとめ
以上、中国人観光客の爆買い現象を軸に、インバウンド消費の「今まで」と「これから」を考えてみました。
中国人観光客だけをターゲットにした“付加価値”の提供ではなく、「国内向け」や「中国(海外)向け」といった考え方を排した、根幹的に優れた価値の提供を続けることが、結果としてインバウンド需要に応え続けることに繋がるのではないかと、想定されます。
また、最後の項目でも取り上げたように、中国の購買力を会社の成長に反映させるなら、「来てくれる人頼りのビジネス」ではなく、「中国で暮らす人に向けて発信するビジネス」を展開することが、最善策なのかもしれません。
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