2019年現在、中国は日本よりも「電子マネー」の普及がずっと進んでいます。
中国向けのWEBマーケティングおよびサイト制作・運用においても、中国国内の電子マネー普及率の高さを無視することはできません。
中国の電子マネー事情をきちんと踏まえた、WEBマーケティング・WEBサイト制作を実行しなくては、商品の購入やサービス契約に繋がりにくいことは、もはや明白だと言っても過言ではないでしょう。
そこで今回は、中国で暮らす人々の生活になぜ電子マネーが浸透しているのか、そして急速に電子マネーが普及したキッカケは何なのか、簡単にまとめてみました。
中国のスマホユーザーの約9割が電子マネーを積極的に使っている
まずは、“中国国内における電子マネーの普及率の高さ”について、もう少し詳しく言及しておきましょう。
中国では、スマートフォン(以下スマホ)を「ピッ!」とQRコードにかざして、スムーズに会計を済ませる生活が、もはや当たり前です。
日本人のように、財布の中に現金を入れて持ち歩くということは、中国のスマホユーザーであればほとんどしなくなりました。
一説には、「スマホユーザーの約9割が現金をほぼ持ち歩かず、電子マネー決済を積極的に使っている」とも言われています。
キャッシュレス化がなかなか進まない日本でも、電子マネー決済が無いわけではありません。
例えば、ICOCAなどのICカード決済をコンビニや自販機で利用する人の姿は、最近になってようやく見かけるようになりました。
しかし、中国ほどの高い電子マネー普及率には及びませんし、まだクレジットカード決済にすら対応していないお店も多くあります。
日本人の多くが現金を持ち歩かなくなるまでには、もう少し時間がかかりそうです。
中国のスマホユーザーが電子マネーを積極的に活用する2つの理由
中国について、日本と比較して「IT革命」の訪れが極端に早かったという訳ではありません。
それにも関わらず、中国国内で電子マネーが急速に普及したことには、大きく分けて下記2つの背景・理由があります。
1. 人口が多いゆえに各所で起こるタイムロスが大幅に減るから
2. お金の動きを細かく可視化できるから
以下の項目で1つずつ、中国の電子マネーがなぜ普及したのか、その理由を紐解いてみましょう。
【1】人口が多いゆえに各所で起こるタイムロスが大幅に減るから
中国の人口は2005年に13億人を超え、現在に至るまで増え続けています。
特に重慶市の人口が多く、その人口は東京都の約2倍。 ※2017年時点の統計比較
重慶市・北京市・上海市など、中国の都市部における人の多さ、およびそれが原因で起きる混雑は、日本でしか生活したことがない人の想像を軽く凌駕(りょうが)します。
東京や大阪など、日本の都市部で暮らしていると、「人が多くて面倒だ…」と感じる機会は1日に何度もあります。中国では、“その頻度と程度がもっとすごい”ということです。
• レジの行列に並ばなくてはいけない
• 人気の店に入るまで長く順番を待たなくてはいけない
• 公共機関や銀行などで手続きをする際、とてつもなく時間がかかる ……etc
上記のように、都市部での生活の中で頻繁に起こる「タイムロス」に、中国で暮らす人々はストレスを感じてきました。
増え続ける人口と並行して、都市部での生活の不便さには拍車がかかっていったのです。
そんな中、ここまで述べてきた「タイムロス問題」を乗り切る大きな糸口となったのが、他でもないでした。
例えば、スーパーやコンビニで買い物をする場合、電子マネー決済であれば、財布の中からお札や小銭を探す手間が省けます。
個人としてはわずか十数秒程度の効率化かもしれませんが、これが集団になると、1時間や2時間、あるいはもっと大きな効率化をもたらすのです。
“あらゆる場所で支払いが直ぐ完了すること”は、これまで混雑によるタイムロスを避けられなかった中国都市部での生活に、大きな変化を与えました。
「仕事がしやすくなる」、または「プライベートを楽しみやすくなる」、こうした変化は電子マネーが普及するために、十分すぎるくらい理由であったのです。
【2】お金の動きを細かく可視化できるから
電子マネー利用の普及は、中国国内の企業にとっても助かることでした。
日本の企業もそうですが、経費を清算するには、“1人1人の社員が何に何円使ったのか”、きちんと報告してもらう必要があります。
領収書を失くさずとっておいて、後でそれを1つのデータにまとめて、経理担当の人が全社員のぶんを清算する……というのが基本的な流れですが、人数の多い企業ではこの業務が負担かつ、どうしても不正確になることが否めません。
しかし、電子マネーを使った支払いがベースになれば、スマホに残った電子マネー決済履歴を抽出することだけで、個人の清算が完了します。
それを全社員ぶん取りまとめる経理担当の業務も、はるかに楽になるでしょう。
また、ビジネスだけでなくプライベートにおいても、お金の動きの可視化には大きなメリットがあります。
そのメリットとは、家計簿やその機能を有したアプリ等に、逐一収支を記録しなくとも、電子マネーの決済履歴を見れば、自分が何に何円使ったのかがひと目で分かることです。
中国に暮らす1人1人の資産形成(貯金・貯蓄)の効率化においても、電子マネー決済の普及が無関係ではないということです。
アリババの台頭や紅包(ホンバオ)の流行は、電子マネー普及の起爆剤のようなもの
中国で電子マネーがなぜ普及したのか、その理由は「各所で起こるタイムロスを減らせると分かったから」、そして「お金の動きを細かく可視化できるから」、この2点でした。
これはこれとして、中国内で電子マネーが急速に普及したことにはキッカケ、‟人気に火をつける”という意味では、ある種の「起爆剤」とも言える、いくつかの出来事が影響しています。
有名なのは、アリババの台頭と紅包の流行です。
アリババとは、簡単に言うと中国最大規模のECサイトです。私たちがAmazonを利用するような感覚で、中国の人はアリババを利用します。
このアリババでQRコード決済、銀行口座からの自動引き落としがシステム化されたことで、電子マネーの認識は急速に拡大していきました。
そして、もう1つの要素が紅包(ホンバオ)の流行です。紅包とは、中国語でご祝儀・お年玉を意味する言葉です。
中国には昔から、紅い包みにお金を入れてお世話になった人に配る習慣が存在しました。
(※日本では親戚など近しい間柄でお年玉などのやり取りが行われますが、中国の紅包は金額はささやかだけれども、より多くの人に配り歩くイメージです。)
この紅包を、スマホアプリを使ってより気軽に贈りあうことが、今から6年ほど前に中国でちょっとしたブームになりました。
スマホを使って紅包を贈るには、モバイル決済に対応していることが必要なので、「流行に乗ってアプリで紅包を贈ってみたい!」と考えた中国のスマホユーザーの多くが、電子マネー決済の利用を開始し、あっという間に馴染んでいきました。
若年層を中心にたびたび発生する流行が、一過性のものに留まらず、‟国のお金の在り方”という大きな概念を変えた、稀有な例です。
【まとめ】中国の電子マネー普及率の高さに合わせたWEB戦略が必要
<中国で電子マネーが普及している理由>
• 人口が多いゆえに各所で起こるタイムロスが大幅に減るから
• お金の動きを細かく可視化できるから
<中国で電子マネーが急速に普及したキッカケ>
• アリババ(中国最大ECサイト)のモバイル決済対応
• 紅包をアプリで贈りあう流行 ……etc
以上、中国の電子マネー普及事情について、まとめました。
‟無駄を嫌い、サービスや商品をできるだけスムーズに手に入れること”を好む、中国の人々の間で、電子マネーが現金支払いを圧倒していくのは、必然だったのかもしれません。
中国向けのWEBマーケティング・サイト制作を成功させるためには、なぜ中国で電子マネーが必要とされているのかを追求し、日本ではまだ根強い「現金支払い文化」に囚われないよう、注意が必要です。